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デジタルガジェットやコンピュータについてのブログです。

USBによってACアダプタが要らなくなる時代が来る?

書きためていたメモを記事に起こしたものなのでネタが古いですが。。
と思っていたら本家specが最近、公開されてました。

Universal Serial Bus Power Delivery Specification

http://www.usb.org/developers/docs/

USB 3.0推進グループ、最大100Wの新給電規格を策定へ。ノートの充電も対応
http://japanese.engadget.com/2011/08/12/usb-3-0-100w-usb/

USB 3.0推進グループ、最大100Wの新給電規格を策定へ
http://unkar.org/read.html#!/poverty/1313589083

というような概要の記事です。本家本元のUSB-IFによると以下のような要点です。

USB 3.0 Promoter Group Announces Plan to Release New Power Delivery Specification
[8.9.2011] USB 3.0 Promoter Group http://www.usb.org/press/USB_Power_Delivery_Specification.pdf

Key characteristics of the forthcoming USB Power Delivery solution include:
・ Compatible with existing cables and connectors
・ Enables voltage and current values to be negotiated over the USB power pins
・ Enables higher voltage and current in order to deliver power up to 100W
・ Switchable source of power delivery without changing cable direction
・ Coexists with USB Battery Charging 1.2 and works equally well with both USB 2.0 and USB 3.0

アバウトに翻訳するとこんな感じです

  • 既存のケーブルやコネクタと互換性を持つ
  • 電圧や電流の値をUSB電力ピン上でネゴシエート可能
  • 最大100Wの電圧や電流を供給可能
  • 電力供給ソースの向きをケーブルの向きに関わらず切り替えられる。
  • 既存のUSBバッテリチャージ1.2や、USB2.0USB3.0と共存する。

何が楽しいの?


これが流行るとどんなことが起きるかというと、今まで以上に様々なたくさんのモノが、「USBケーブルだけをつなぐだけ」で充電や給電できるようになる。
既存の様々な問題を解決し、ACアダプタ革命が起きることになるでしょう。

・家のデスクトップPCとノートPCをUSB接続し、データ同期をしながらバッテリ充電する。
・3.5インチHDD(2.5インチではない)をUSBケーブル一本で駆動し、データ読み書き可能になる。
・プリンタやスキャナなんかもUSBケーブルだけで動かせるようになる。
・デスクトップPCからUSB接続での電力供給で、ディスプレイを駆動する。
・タブレット端末をUSBケーブルで充電できる。

iPadはUSB充電ですがAndroidのタブレット端末は12Vのものが多く、ACアダプタからしか充電できず不便なのですが、これが解消されます。
アダプターデバイスなんかも登場するでしょう。USB PowerDelivery 対応Deviceとして振る舞って、好きな電圧を取り出して既存のACアダプタ端子で出力するようなもの。これがあれば、夢の「ACアダプタ完全統一」が実現します。
USB PD給電できる電源タップが、家庭やオフィスやマクドナルドなどで増えていけば、もはやノートPCやタブレット端末を持ち運ぶときにACアダプタを持ち運ばなくて済むようになります。USBケーブル1本あれば、その辺でテキトーに充電できるようになるわけですよ。
また、いままで小さい電力の電化製品にはほぼ必ずACアダプタが付属してきましたが、あえて付属せずに別で用意してね、とということもできます。すると製品パッケージが小型化でき、輸送コストも減るという点で省エネやコスト削減になります。MacBookのパッケージなんかも小型化の工夫の歴史がありますので読んでみて下さい。


以下はもう少し詳細です。
と思ってたら本家specがいつの間にか公開されてました。
http://www.usb.org/developers/docs/
http://www.usb.org/developers/docs/usb_30_spec_071012.zip
USB_PD_V1_0-20120705-final.pdf

アバウトにざーっと読んでみます。



要点ピックアップ(あまりちゃんと読んでません)

  • ContributorsにNokiaQualcommも居るのが目を引きます。携帯端末に関係してくることが伺えます。SeagateやWesternDigitalはHDDですね。
  • ソケット側(メス)に、接続を認識する端子(PD DETECT)が2本増える。ただでさえ端子が増えて窮屈なUSB3.0にさらに増えます。これはつまり、奥までしっかり接続された状態でないと大電力を供給しないようにする、もしくは供給中に抜けたらすぐに送電を停止するといった安全上の考慮と考えられます。
  • 3.5 USB PD Icon, アイコンは既存のUSBロゴを囲うようにバッテリの枠が付いたものになるようです。
  • 5. Physical Layer, 4b5bエンコーディングになっている。ただのI2CかSPIかと想像してたらもうちょっとハイテクですね。電力ラインで通信するという点はまるでPLCみたいですね。
  • 6. Protocol Layer, メッセージベース通信。完全に1対1の通信なのでシンプル。
  • 7. Power Supply, はじめは5Vですが、ネゴシエーションで5Vより小さい電圧に遷移したり、大きい電圧へ遷移したりするみたいです。安定化電源のように。
  • 8. Device Policy, 電源をどう供給するかのポリシーマネージャという概念があるようです。

たとえばHDDはスピンアップするときだけ電気食うけどどうするのとか、バッテリ充電はたくさん電流ながしたほうが速く充電できるけど他のデバイスどうするのとか。

  • 9. System Policy, なにかDescriptorが追加されるようです。PowerDeliverySpecに加えて、BatteryChargeSpecのCapabilityも表現できるようです。

また、PDUSBHubという新しいクラス?ができるみたいですね。PD関連の制御を行うRequest/eventが定義されています。

  • A Power Profiles, ここが重要なところです。電源供給側(Source)の能力を表すプロファイルです。

A.1 Profile Definitions
There are the following profiles based on Fixed Supply Objects:
 Profile 0 reserved
 Profile 1 capable of supplying 5V @ 2.0A
 Profile 2 ports are capable of supplying 5V@ 2.0A, 12V @ 1.5A.
 Profile 3 ports are capable of supplying 5V @ 2.0A, 12V @ 3A.
 Profile 4 ports are capable of supplying 5V @ 2.0A, 12V and 20V at 3A respectively.
 Profile 5 ports are capable of supplying 5V @ 2.0A, 12V and 20V at 5A respectively.

5V, 12V, 20V, が区切り目のようです。5Vは既存のUSB spec準拠、12VはHDDが使ったりATX電源から来てたりするよく使われる電圧、20VはノートPCのバッテリ充電用、という主な用途が伺えます。ただしこのプロファイルが全てではなく、独自の定義をしても良いみたいです。


Overviewを見た感じ、「モバイルバッテリになるUSB PowerDelivery対応USBハブ」みたいな製品も出そうですね。こういう感じの。http://panasonic.jp/battery/pocket/ すでに充電も給電もUSBなので、じゃあハブもくっつければ便利だよね。という発想。

そういえばこんなのもありましたね。通信できる電源という意味では、これに似たこともできるかも知れませんね。

ソニー、挿すだけで機器を認証する「認証型コンセント」
−AV機器の課金やEVの充電他。世界的普及目指す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20120214_511978.html

USB電力の現状


昨今はUSBから充電するものがふえました。
EU圏だと法律で、携帯電話はUSB micro Bコネクタで充電できないとダメ的なものがあるそうです。

欧州委員会、携帯の充電器をMicro USBで統一へ――NokiaAppleほか10社が合意
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0906/30/news018.html

iPhone5(仮)のdockコネクタが小型化してmicroUSBになるという話も、この文脈を汲んでいます。
日本でもケータイ(ガラケー含む)のACアダプタが統一されましたね。

USB給電のモバイルバッテリやACアダプタ製品はたくさん登場していますし、
電源オフでも給電するUSBハブやノートPC、なんかもあります。

BSH5A02シリーズ
http://buffalo.jp/products/catalog/supply/peripheral/usbhub/bus-self/bsh5a02/

そのほかの送電システム

PoE

シスコ、業界初となる60Wの電源供給を可能にした次世代PoEを発表
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20111019_484583.html

Ethernetケーブルで給電するものです。IP電話とか動かしたりするらしいです。

PoEはどちらかというと「固定設備寄り」で、USBはどちらかというと「携帯装置寄り」ということで、
かぶるところもあるけど、かぶらないところもあるような感じです。
USB扇風機じゃなくてLAN扇風機とか作れますね。

Qi

無線のやつです。

PoweredUSB

その昔、PoweredUSBっていうのがあったのですがUSB-IFの承認得てない規格でした。でもDELLやlenovoの一部ノートに搭載されてたりしました。黄色い端子のアイツです。これもある意味、黒歴史の仲間入りですかね・・・。

不安材料

あんまり電気・電子と、変圧まわりの最新パーツ事情とか詳しくないのですが、USB Power Delivery Specと似たようなものもありました。

ケータイからノート・パソコンまで全てのACアダプタを共通化――実現への道筋をGreen Plug社に聞く
米Green Plug Inc. Paul Panepinto氏
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080624/153719/

かえって効率が悪くなる?って話も出ていますが、そのへん克服できるのでしょうか。

なんかの新聞で見かけた、AC100VからDC5Vを作るレギュレータをすごく小型化する研究してるとか。
「ACアダプタ」というかさばるものがあるからめんどくさいわけで、そのサイズが超小型化して携帯電話に内蔵できるレベルになれば問題なくなるわけで。AC100Vを直接、携帯電話へ接続することができるとか。古い人間からすると恐ろしいイメージがしますが。。



端子の問題


家電製品には必ずACアダプタがついていて、たいていは丸い端子をしていると思いますが端子の径がマチマチです。細すぎて折れてしまうほどのものもあります。中央がプラスなのが普通だが、稀に逆だったりします。同じ径なのに違う電圧だったりして、間違って刺して壊したりします。
USB Power Delivery SpecであればおなじみUSBコネクタなので、そう簡単に壊れたりしません。また、電圧と電流をネゴシエートするので、異なる電圧供給による故障は避けられるでしょう。また、今度は逆にソース側の端子ですが、いままで一つのデバイスに一つのACアダプタが付属していたため、家の壁のAC端子は埋まり、マルチタップはたこ足になっているひどい状況です。このUSB Power Delivery Specであれば、100W供給できる箱についたUSBコネクタにたくさんつなぐだけです。配線がスッキリするでしょう。
いわばパーソナル変電所のようなもので、変電所で容量の範囲内であれば複数のデバイス給電を賄うことができるでしょう。

省エネの観点から「家庭内直流化構想」という構想は以前からあるようです。その構想はUSB Power Delivery Specの目標と一致していると思います。

家庭用コンセントを直流に ・・・なんぞそれ
http://kazhisa.blog22.fc2.com/blog-entry-1004.html


それによって、家の壁のコンセント埋め込み型のUSB端子も出てくるかも知れません。 いちおう既製品は存在します。(壁の割には合計1A、、と弱いですが)

壁ハメ派シリーズ - KABEHAMEHA -
http://www.planex.co.jp/products/pl-kc1us2/

また、いまノートPCやタブレット端末などはUSB端子とは別に充電端子を備えていると思いますが、それも不要になります。「本体の充電可能なUSBコネクタ」を一つ用意しておけば良いのです。USB PDでは電源供給の向きをどちらにでもできるので、それはつまりUSBホスト端子(スタンダードA)であってもUSBデバイス端子(マイクロBやミニBなど)であっても、充電可能ということです。



電化製品の消費する直流電圧


あくまでUSB specなので電圧が5Vに縛られている。このため電力、つまりWattageを増やすには電流を増やすしかありません。電流を2.0Aにまで増やしてどうしても5VのUSBで充電したかったのがApple iPadです。しかし、Androidタブレットデバイスには12Vのモノが多いです。SONY Tabletなんかも12Vです。このため最新デジタルガジェットのくせにUSBから充電できないというとても不便な状況になっています。いや僕もA500というAndroid3.0世代のタブレットを持っているんですが本当に不便です。マジで。

その点USB Power Delivery Specであれば、供給する側に能力さえあれば12Vでも給電できるので、無理なくタブレット端末を充電することができるようになるでしょう。また、3.5インチHDDも12Vが必要ですので、12VさえUSBから給電することができれば、夢のケーブル1本で3.5インチHDD駆動が実現します。自動車のシガーソケットも12Vで、シガーソケットから受電する車内用ガジェットなんかもあります。昔のHDDのうしろにあるATX電源のペリフェラル側の4本の端子なんかも、5Vと12Vを供給しています。

そのほかに使われている電圧といえば、ノートPCのACアダプタを見ると13V〜19Vくらいですので、最大で20Vまで可変で供給できれば足りるはずですね。乾電池が1.5Vですので、1.5の倍数の電圧もそれなりに需要がありそうです。

デジタルカメラのバッテリ、特にビデオカメラや一眼レフなんかのバッテリは、意外とインテリジェントなバッテリをしていて、バッテリに通信端子を持っていて残量を計測することができます。SONYのiナントカっていうシステムとか。ノートパソコンのバッテリもそういったシステムを持っていて、マザーボード側からSMBusで通信しています。一眼レフやカメラのバッテリなんかも、USB PDで充電できるようになると便利ですね。いまは専用のカポっとハマるACアダプタでないと充電できないので。むしろバッテリの電極そのものをUSBにしてしまえば一石二鳥かも?USBでノートPCに接続して、データ吸い出しながら充電とか便利ですね。



供給電力の拡大


言ってみれば、100W以下の物は全てこのUSB Power Delivery Specで動かすことができるのですから、
100W以下の電化製品すべてをこのSpecに準拠させればよいのです。そうすれば、「全ての100W以下の電化製品は共通規格のACアダプタを使用してください」ということが常識になり、製品にACアダプタを付属しなくて済むようになります。
携帯電話業界におけるACアダプタ共通化による省資源化」が、より広義に再定義され、より省資源化が加速することでしょう。
現実的には全部なんて無理でしょうが、PC周辺機器や、PCと親和性のあるデジタルデバイスなんかは進んで準拠していくでしょう。

たとえばディスプレイの電源をPC本体から供給できるようになるでしょう。いま現在は100Wを超えるディスプレイなどというのは、30インチクラスでないと存在しないので、つまり30インチ未満のディスプレイならカバーできることを意味します。USB接続のディスプレイアダプタという周辺機器のジャンルも地味に流行っているので、それが少し便利になるかも知れません。

mac miniとかpicoITXフォームファクタの小さいPCは、ACアダプタで駆動してるものがある。そういったものも、このUSB powerで電源供給がまかなえるかも知れない。ただ、USBケーブルは抜き差しを前提にしているコネクタなので、抜けにくい工夫なんかが必要かも知れません。



世界各国のAC送電電圧


前述したようにUSB Power Delivery Specに対応したACアダプタは、「パーソナル変電所」のようなイメージになります。変電所が共通化されるメリットは、各国のAC電圧に影響されにくくなるというメリットがある。いま現在でも、AC100V〜AC240Vまで対応、というACアダプタはたくさんありますが、たまにAC100V専用、日本国内専用というものもあり、そういったものは海外で使えないかも知れません。その点、USB Power Delivery Specにさえ準拠してしまえば、それに準拠した「変電所」を使う限りは動作保証されると考えることができます。つまり、重要なのは「よりローコストにグローバルに動作保証できるようになる」わけです。
 あとは、家庭の燃料電池太陽光発電などのコジェネとか、スマートグリッドと連携したりとか、するんですかね?

旅行が多い人なんかはちょっと便利になるかも知れませんね。
USB給電で動くことができるデバイスというのは、USB給電のモバイルバッテリでも動かせるわけなので、すなわち、USB化と同時にモバイル化も簡単に達成できるわけです。いままで壁面のACからACアダプタで動くことを前提にしていたモノなんかが持ち運べるようになります。
まあ、それは既に達成されているっちゃいるんですが。



SEE ALSO

最大100WのUSB給電規格 USB PD 策定完了、ノートの充電も対応
http://japanese.engadget.com/2012/07/23/100w-usb-usb-pd/

【IT】USBの新規格「USB PD」 バスパワーが最大100W・給電能力が大幅アップ★2
http://uni.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1343180062/

コンセントにUSBポートを増設する「Power2U」
http://gigazine.net/news/20120605-usbpower2u/


CES 2013でデモがあったみたいです

Power your laptop with a USB cable | SemiAccurate http://semiaccurate.com/2013/01/07/power-your-laptop-with-a-usb-cable/#.uo7pc2fd5ln

【イベントレポート】展示会場やテクニカルセッションで新技術に注目集まる ~DDR4/LPDDR4、USB Power Delivery、液体なしリチウム電池など http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/event/20130412_595681.html

USB 3.0はさらに2倍速へ:スマホのUSB給電でノートPCが動作可能に――拡張規格「USB PD」の技術デモ (1/2) - ITmedia PC USER http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1304/19/news124.html