人類にITは早すぎたのか
「誰でも使えるIT」という幻想
人に優しいUIやデザインや、らくらくホンとかヒューマンセントリックエンジン()など、理想は大事だしその考え方が成果も上げているけども、理想には遠いなあというのが実際の状況だと思う。
【UI調査】iOSとAndroidのスイッチ 7種類比較 | アプリオ
人と機械が良い関係を結ぶには、
- 機械にコストをかけて人に歩み寄る。
- 人にコストをかけて機械に歩み寄る。
の2つの手段があると思うのだけども、1に偏重しすぎなのかなと思う。2があまり感じられない。
それは「お客様は神様です思想」があるのかなあ。App StoreやGooglePlayのアプリのレビュー欄みているとそんな感じがする。
「ITがわからない」という以前に、その状況を汎化すると「タダで成果物を提供している人間に言う態度かそれ?」という問題。飲食店の店員に横柄な態度をとる客と共通する問題。開発者は神様ですとも言わないけど。もっと対等な目線になれないのかなあ。レビュー欄が荒れてることについてはAppleもGoogleも苦労してるみたいで、Googleは以前は匿名でレビューできたのがID制になった。
「ボタンひとつでパーッとなんでもやってくれる」みたいな、ドラえもんみたいな。そんな程度の認識なんだよ。
いまだに暗号化されてないWiFi APを見かけるし、相変わらずパスワードは12345だし。
パソコンできないおじさん
コンピュータのリテラシの無さもさることながら、それ以前の文章力の無さも問題だと思う。それは戦後教育の失敗というやつなのだろうか。
最近、仕事で他人が書いた文章を手直しする機会が増えたのだが、三十四十になってもまともな文章が書けない人間がこんなに多いとは思わなかった。電話メモ以上の文章は無理というのが社会人のデフォルトかと思うくらい。そう思うとツイッター民てスゴイで。アホに見えても社会の上澄みやで。
— むしまる(Qでない) (@fudesakisanzun) December 26, 2013
日本語があまりロジカルでなく、また、明言もしない言語であるという特徴がITとの親和性が低いというハンデもあると思う*1。ハイコンテクスト文化。「いわずもがな」文化。不文律。それは外交のやり方にも表れていると思う。
大局的に、日本人にはまだコンピュータは早すぎた道具だったのだろうか。イエローモンキーと揶揄されて仕方ないと思う。
もしPC技術の習得に本気で取り組まなくてはいけなくなったとしたら、 20・30の若造たちに、ことあるごとに頭を垂れて教えを乞わなくてはいけない。 独学するにしたって、PCスキルのヒエラルキーでは、かなり下位の方に列せられてしまう。 ある程度の年齢に達したら、やっぱそういうのって屈辱的だと思う。 40代~にPCスキルが身につかない理由
米大統領「全ての人よ、プログラミングを!」 | Life is Tech!(ライフイズテック)
仕様変更がなぜ駄目なのかわからない顧客
ITパスポートという試験がある。
情報処理推進機構:情報処理技術者試験センター:情報処理技術者試験制度:制度の概要
思うに、IT系のシステムを発注する側の担当者にこれの取得を法律で義務付けるとか。どうだろうか。ITを作る側に立つとき、もはや冒頭で挙げたような「誰にでも使える」という生易しい要素は大きく低下する。そこは普通の人ではできない専門分野になってくるのだから、それ相応の知識と技術と経験が必要になるのだから、資格取得を義務付けるという案は妥当だと思う。
たとえば放射性物質を取り扱うのにも国家資格が必要です。放射線は危険物だから。 原子力安全技術センター
ITだって取り扱う情報によっては危険物だし、個人情報が漏れたりする。医療や軍事など失敗が許されない(ミッションクリティカル)ものもある。
だけども実態は、そういった専門知識がなさすぎることに起因するトラブルが日常茶飯事である。いったい同じ失敗をいつまで繰り返すのだろうか。なにか対策を打たないのだろうか。打っているけど追いつかないのだろうか。割りを食うのは下っ端である。
w32.jp WeBlog: ソフトウェア開発はなぜ難しいのか ~「人月の神話」を超えて
業務と要件のミッシングリンク、あるいは仕様変更が永遠に繰り返される訳:プロジェクトマジック:ITmedia オルタナティブ・ブログ
ITコーチの「エンジニアのためのコミュニケーション術」: ワークスタイル
システムはどこまで内製化できるか - 急がば回れ、選ぶなら近道
IT化に対して活用でなく規制で対応する社会
日本はそろそろIT敗戦を認めてやり直すべきやと思う。公務員の給与がどうこうより、役所の手続きが全部オンラインで済まへんのが問題やろ。クールジャパンと言いながら、コンテンツをネットで拡散でけんのが問題やろ。サイバーな世界をアニメで描きながら、満員電車で毎日通わなあかんのが問題やろ。
— Ray @ GF8D STi Ver.3 (@wagonthe3rd) June 10, 2012
社会のIT活用についてとても遅れている理由の分かりやすいのが著作権まわり、特に音楽業界だと思う。いまだにダウンロードが悪いと思っているらしい。活用が進まない背景には、そういった既得権を守る類のほかに、先に述べているような「専門知識不足に起因する開発効率の悪さ」や「エンジニアの待遇や環境の悪さ」も一因としてあるのではないだろうか。winnyが開発者の逮捕でなく未踏ソフトウェアプロジェクトに採択されていたら、どうなっていただろうか。
進んでいるのは国土が狭いという地形効果でもたらされる、住宅での低価格な高速回線くらいだろうか。そんな回線が得られるのに通勤混雑の緩和ができないのは尚更おかしいのではないだろうか。
人類が本当に必要だったもの
ここまでIT側を擁護してきたけれども、そもそも「人間の役に立つ道具」なのだから、冒頭で挙げた1と2なら、どう考えたって「1. 機械にコストをかけて人に歩み寄る。」が優先されてしかるべきなんだよね、人類全体の大局的な視点では。でも、コンピュータをいじくるエンジニアもまた人間なんだよね。機械ではない。
人と社会と機械と、機械を使う人と作る人。それらがみんなwin-winの関係を築くことができる未来は訪れるのだろうか。今はまだ、うまく行っているようには見えない。コロコロ変わるEvernoteのUIとか。
社会の問題もたくさんあるけど、エンジニアリングに問題もたくさんあって*2、エンジニアである私にはエンジニアリングに尽力することで人類とITとの関係性の改善に努めたいと思います。
それが本当に関係性の改善につながるのかどうかはわからないけど。
それなりに本気はだすけど、本気が結果につながるかどうかは運でしかないです。
どうがんばったってたどり着けない、解決できずに何百年も残る問題なのかも知れない。数学の難問みたいに。